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書く男(小説)



   書  く  男 ( 小 説 )

   ほの暗いランプの灯りの下で男は何かを書いている。

   黄色いランプの灯りがノートを照らし
   青いインクがページを埋めていく

   時折、左手で白いカップに入ったコーヒーを
   口に運んでその苦味を舌に感じながら喉に
   流し込んだ。

   とある喫茶店は大通りに面した地下1階にあった。

   この男は毎日19時頃にフラッと来て閉店の
   22時頃までその喫茶店で過ごすのであった。

   年齢は30代半ばだろうか。
   顔は細面で目は二重のナイスガイ。

   ふちなしの眼鏡をかけたスタイルの
   よい好男子である。

   いかにも知的で現代風な風采をしている。

   男は古風な文学青年のような匂いのする
   不思議な雰囲気を周囲に漂わせていた。

   大きなB4サイズの茶色いカバンを携行して
   この喫茶店に入って来ると男はいつも一番
   奥のカウンターの席に陣取るのであった。

   とにかく毎日この喫茶店に来てノートを
   出して何かを書いている男なのである。
   書くことが好きな男なんだろう。

   時折、肩肘をつき水性ボールペンを持ったまま指を
   右こめかみにあて顔を右に傾けてそして男は静かに
   瞼をとじた。

   5分間ほどの瞑想タイムが終わるとまた書き出すのだ。

   何かにとりつかれたように書く男の姿は、ただコーヒー
   を飲んで話をして喫茶店を後にする人たちとは明らかに
   物腰が違っていた。

   ただ一人きてコーヒーを飲みながら何かを書き綴り
   閉店がくれば「 さあ帰るか”」こう一言つぶやいて
   フッと街の中に消えて行く男なのである。

   喫茶店のボーイもウエイトレスもこの男を注視して
   いるがさりとてこの男との会話を求めようとはしない。

   この男は服装のセンスがよい。
   よいというよりよく似合っているのである。

   この男のかもし出す雰囲気と服装センスのよさが
   あいまっていっそう相手の会話を寄せつけないのである。

   ペンを握った右手の人差し指と親指の間隔を7センチ
   くらい開きその指を右こめかみにそっとあててコーヒー
   を飲むのが癖になっている。

   今日も日替わりコーヒー2カップを注文した。
   いつも日替わりの2カップが定番である。

   席についてから男はもうかれこれ1時間も書き続けている。

   水性ボールペンが黄色い紙片の上を滑降すると
   鮮やかな文字が一つづつ浮かび上がっていく。

   紙片が黄色く見えるのはランプのせいだ。

   店内には曲名も知らない軽いメロディーの
   ムード音楽が流れて男を心地よくさせた。

   ほの暗い灯りの調光もよく整って
   書くのには最高の条件を備えていた。

   男はまだ書き続けている。
   もう2時間はとうに過ぎたというのに・・・

   この間男は、コーヒーを7回ほど口にし
   トイレに2回行ったのみである。

   それ以外はずっと書き続けたのであった。

   一人きて一人で帰っていく書くのが好きな男。
   今日も閉店までいてフラッと街の中に消えていった。

   はい。ストップ!!

   何を書いているのか誰もしらない不思議な男。
   この男の正体をもっと知りたいものです。

   これから先は、あなたの想像力で綴って下さいね。

























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